いきなり近所を天狗みたいな下駄で闊歩するわけにもいかないので、すぐ近所の公園まで普通のスニーカーで行き、公園で履き替えて歩いてみた。

ところが、下が砂利なもんだから、うるさくてうるさくて。歩く度にジャリジャリジャリジャリ音がして目立ってしょうがないのでそそくさと下駄をリュックにしまい、そのまま別の公園までナンバウォーキング。

ところが、「人通りが無い」「地面が土or草」「暗くて目立たない」といった条件を満たす公園が見つからず、そのままウロウロウロウロ30分近く近所を徘徊。連続30分ものナンバ歩行チャレンジは初めてだったので期待したが、やはり何も掴めず。

やっと条件を満たす公園を見つけ、下駄ウォーキング開始。しかし残念なことにどうってことなかった。一本歯の下駄に過剰な期待をしすぎていたかもしれない。

「一本歯の下駄を履くと嫌でもナンバ歩きになってしまう」
「一本歯の下駄を履いていつものように歩くと転んでしまう」

みたいなことを期待していたのだが、そんな事はなかった。
普通に歩けました。軍隊の行進みたいな勇ましい歩き方をしてもどうってことなかった。

20分くらい公園内をウロウロと下駄で歩いた後、靴に履き替えて家に向かう。何やら足が軽い気がした。下駄の方がスニーカーより重いんだから当たり前だと思いつつも、何か違う。早く帰ってビールを飲みたいという欲求も手伝って、少し走ってみる事にした。

しばらくすると、身体に何やらリズムみたいなのが浮かんで来る。そのうち肩が歩調に合わせて「スコンスコン」と落ちるような感覚が出てきた。「お!コ、コレか?コレなのか?」と思い、股関節に意識を集中してみると、こちらもスコンスコン言いながら回転している。回転というかスイング。

気持ちいいので、そのまま為すがままに身体をヘコヘコいわせながら走る。走るというか、歩く以下のスピードで走る。とにかく気持ちがいい。肩はガクガク動いてるし、足はがに股でヨッチヨッチしているし、かなり恥ずかしい走り方なのだけど、やめる事ができない。人とすれ違うのが本当にツラい。

けれどもビールを買って帰らなくてならないので、そのままヘコヘコと明るい通りに出る。そこで店の窓ガラスに写った自分のランニング姿を見てびっくりする。

全然変な動きではないのだ。肩も別に上下してないし、足だってガニ股つっても、「ちょっとO脚の人」程度のもんだった。

とうわけで、どうやらナンバ走りを少し体感してきたような感じがするのだがどうだろう。コレがナンバ走りなのだろうか?それ以上に気になるのが、この体験が本物だとして、それが一本歯の下駄によるものなのだろうか?という点。

要は、下駄代4500円は無駄だったか無駄じゃなかったか?つー話。少なくとも、下駄で歩く場所さがしの為に「30分歩いた(スニーカーで)」っつーのがデカい。